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周りの灯りが涙でにじむ。
しかしすぐに私の視界は、彼に抱き寄せられ暗くなった。
溢れる涙は彼のスーツに染みを作っていく。
「葉月」
優しい彼の声が、一層私の心を焦がすようだ。
熱くなりすぎた胸は彼に頭を撫でられても落ち着きそうにない。
突然のプロポーズは確かな彼の気持ちの現れで、今も頭で繰り返されている。
「ありがとう、ございます……」
あの状況から、わざわざここに連れてきてくれた彼はどんな思いだったのか、
必死な彼の気持ちが伝わらないわけがない。
「葉月」
「私、もう……」
彼を困らせた私に、こんな素敵に伝えてくれたことが嬉しすぎて言葉にならない。
「いいよ……」
きっと、彼は私の気持ちを察しているに違いなかった。
しばらく預けっぱなしだった私の身体は、彼によって離された。
互いの顔がようやく映ると、彼が額に軽くキスを落とす。
彼の顔が離れるとき、窺えた表情は甘くて胸が鳴った。
それからすぐに右手を掴まれる。
「少し歩こうか」
「はい……」
彼の提案が嬉しく、すぐに頷く。
まだ余韻に浸っていたい。
照らされた歩道を彼と歩き始めた私は、明るい方に左手をかざしてみる。
「わ……」
声が漏れるほど美しく煌めく左指に私は目が離せなくなった。
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