二度目の意味

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徐々に左手を自身に近付け、まじまじと見入る。 すると、右上から小さく笑う声がした。 夢中になり過ぎてハッとする。 彼へ視線を変えると、穏やかな表情で微笑んでいた。 「転けないか?」 足を止めた彼が冗談ぽく言うのに、私は笑う。 全く足元を見てなかったから、手を繋いでいるとはいえあり得そうなことだ。 「ごめんなさい。 あまりにも綺麗過ぎて……」 「そう……」 「はい。 ずっと見ていられそう……」 彼と歩いているのに、夜景よりも左手を気にしている。 「ずっとずっと大切にします」 「あぁ」 彼に約束して、私は再び指輪に視線を戻した。 明日からもずっと身につけると決めたそれは、変わらず美々しく光輝いている。 「毎日着けます。ずっと大切にしますね」 掌の下に彼の左手が重なったから、もう一度約束を口にしてしまう。 「あぁ。 取り消しは、なしな」   「はい」 すると確認するように言う彼が手を離した時、私はふと目がその指に向いた。 「指輪……。 共哉さんも着けてくれますか?」 「あぁ俺も帰ったら着けるよ」 「嬉しい…」 心の声が漏れると彼は笑って、繋いでいる手を強く握る。 それからゆっくりと押し付けるようなキスを唇にくれた。 普段冷たい彼の唇が、今日は熱い。 それがもしかするとだが彼の緊張を表しているように感じて、特別なものに思えた。 きっと私は今日のキスの温もりを忘れることがないに違いない。
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