二度目の意味

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私たちはもう少しだけ歩くのを続けて、公園を出た。 あまり長くいられなかったのは、指輪が気になりすぎて集中できなかったからだ。 思い出の場所となるここへ、次のデートを約束して車に戻った。 私が車に乗り込むと、彼にきつく抱き締められた。 ついさっきまでの穏やかな時間とは真逆のそれに、初めは驚いたもののすぐに愛しくなる。 私もこうしたいと思わなかったわけではないから。 二人の空間になると、彼により近付きたくなる。 「葉月……」 受け入れたいと彼の背に腕を回すと、苦しそうな声が届く。 呼ばれた声に顔を上げると、彼から口付けが降ってきた。 「ん……」 まだ熱い唇から激しいキスを受ける。 その熱にくらくらしてきた時、それは離れて彼が言った。 「帰るが、もうおかしな事言うなよ」 おかしな事というのに、すぐ答えがわかる。   「はい……」 「約束だからな」 彼とする今日何度目かの約束だ。 今約束せずにはいられないくらい、彼にとって私の発言は嫌なものだったのだ。 「はい」 私が大きく頷くと、彼はもう一度キスをしてエンジンをかけた。 運転を始める彼の横顔を見ながら、左手の薬指を右指でさわる。 慣れないおうとつに、彼への思いがわいて止まない。 「共哉さん」 「ん?」 運転中でこちらをちらっと見た彼はすぐに前を向いた。 「好きです」 突然の告白に彼は驚くことなく口の端を上げた。 それよりも私が驚かされた。 「俺も好きだよ」 その言葉に時が止まったように感じた。
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