253人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
そのことではなかったのか……
私はどちらにも焦った。
信号が青になり、彼の顔が真っ直ぐ向く。
それにホッとするのも少しだけで、次に何を言われるのかドキドキしている。
「お前」
「はい」
怒られると覚悟を決めて答えると、返ってきたものは全く予想と違った。
「聞いていたんなら、なんでややこしくしたんだよ」
「え……」
「弥生に話してるの聞いたんだろ?」
「はい」
「お前が好きだって言ったのに、俺の気持ちがわからないとか……」
「え、だって……」
あの時は信じられるはずもない。
だが、彼はあの時も私を変わらず好きだと思ってくれていたということだ。
それにどさくさに紛れた彼の二度目の好きに反応してしまう私が嫌だった。
「でまかせかと思ったか?」
私はそうだとは言えず黙る。すると彼がため息混じりに言った。
「あの時も、今も……」
「はい……」
「初めにお前に言った言葉のせいで、なかなか言えなかったが……
初めからずっとお前が好きだよ」
それはものすごく大きな告白で、息苦しくなるほどに胸が忙しくなった。
告げられた想いに、彼の言う初めての告白の行方がわからなくなる。
だが、それを知りたいと思わなくなるくらい私の心は満たされる。
初めからずっと好きだという言葉に、もうこれからの分も補充できたような気持ちだ。
好きという言葉の重さを改めて知った。
最初のコメントを投稿しよう!