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「もう、一人で考え込むな」
甘い告白をくれた後、少し強めに彼が言った。
その様子に気恥ずかしさがみえた気がしたのは気のせいじゃないはずだ。
「はい……」
彼は私を想ってきちんと言葉と行動で表してくれた。
益々彼へ気持ちが向く。
「いつでも……」
「はい」
「いや……なんでもない」
何かを言いかけた彼が、ちらっとこちらを見た。
暗い車内で絡んだ視線も優しい。
「共哉さん」
たまらなくなり、私は彼の袖を掴む。
それに彼の片手がハンドルを離し、私のその手を掴み直してくれる。
運転中だけど、彼の温もりが嬉しい。
そのまま二人なにかを話すわけでもなく、静かに帰宅した。
誰もいない自宅に「ただいま」と二人で言って部屋に入る。
するとすぐ彼は自室に消えて、私に贈った指輪ケースよりシンプルなそれを持ってきて手に乗せた。
中には一緒に選んだ見覚えのある指輪があった。
「葉月が嵌めて」
「わかりました」
約束を守ってくれる彼に、感激しながら指輪を取り出す。
「着けますね」
彼のそれは、私の時よりもスムーズには入らなくて、力具合に躊躇いを感じながらも着けたため時間がかかった。
「夫婦になりましたね」
「最初から夫婦だがな」
「はい……」
そして二人の左手を並べて、微笑み合った。
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