解ける時間

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私と彼は姉と向かい合うようにして座る。 少しだけ沈黙の間が流れた後、私がそれを割った。 「今日は美月ちゃんは?」 子供には重たい話だから連れてくるとは思わなかったが、やはり気になる。 「お義母さんに預けてきたわ」 「そっか……」 「ねぇ葉月。 蓮池さんがここにいるってことは、私が言ったこと話したのね」 私が振った話はすぐに、姉のものに変わる。 申し訳ない気持ちは一気に押され、緊張がやってきた。 「うん……」 「そう……」 姉は困ったような顔をして私と彼両方に視線を向けた。 「あのね弥生姉、お父様に聞いたよ」 「え……」 「私のためにお父様に会いに行ってくれたこと」 私の台詞は表情を益々困らせた。 それに私は息を小さく吐く。 「ありがとう弥生姉」 「え」 「弥生姉、戻りにくかったはずなのに……」 もう二度と戻らないと思って出たはずの姉は、私の為に実家に足を運んだのだ。 「嬉しかった」 「葉月……」 きっとすごく勇気が要ったに違いない。 私に置き換えたらきっといけない。 初めは驚いたが、徐々にそれは嬉しさに変わった。 間違いなく私を思っての行為である。 だから今日はまず姉にお礼をしたいと思っていたのだ。 「でもね、弥生姉」 私は姉を真っ直ぐに見つめた。 「私、自分の意思で共哉さんとこれからも夫婦でいることに決めたよ」
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