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姉の表情は歪んだものの、それでも私は言葉を乗せた。
「思い込みじゃないってわかったから……。
私、共哉さんとこれからも夫婦でいたいの」
なにも話さないままでいる彼が、私の背に手を添えた。
「いいの?
葉月はずっとお父様のいう通りに生きてきたのよ。結婚までさせられたのよ。
もっと葉月の思うように生きていいのよ」
「弥生姉……」
「せっかく大学に入ったのに、ろくに遊べもしないで可哀想。
まだ葉月若いんだから、いくらでもやり直せるわ。
もしかしてお父様にも止められた?」
姉から出る言葉は私を思うものだと思う。
だけど前に投げかけられた時とは違って、気持ちは揺るがなかった。
「お父様は私が好きにしていいって言ってくれたよ。
止められたりしてない」
「うそ」
「嘘じゃないよ。本当に私にそう言ったよ。
それにね、お父様は私のことを思って相手を共哉さんにお願いしようと思ったって言ってた……」
「なにそれ、意味がわからないわ。
葉月を思って蓮池さんに頼むとかおかしいでしょ。
だいたい本当に思ってるなら娘を簡単に嫁がせないわよ」
私は父の本音と頼りない表情を目にしたから、今の姉の言葉がそうじゃないと言いきれる。
「弥生姉……。
弥生姉は、お父様と話すべきだよ」
「どうしてお父様と?」
「弥生姉と仲直りしたがってるよお父様」
私の彼との結婚を姉が認められないのは、父との確執が深くあるからだと思う。
和解できることをきっと、父が一番望んでいるはずなのだ。
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