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「そんなわけないじゃない。
あの人が私となんて……」
「ううん。お父様寂しそうにしてたよ。
弥生姉が知らない間に結婚していたことを私に話す時、寂しそうだった」
あの時の父の表情にはたまらない寂寥感があった。
「そんなの私がお父様が思う人と結婚しなかったからよ」
姉が言うようなものでは決してないはずだ。
だがそれを私がいくら違うと伝えても届きそうになかった。
「弥生姉はお父様とは絶対に仲直りしたくない?」
「仲直りもなにも私が勝手に出ていっただけだわ」
「ねぇ、もう一度実家に私と行こうよ弥生姉」
直接話すのが一番いいだろう。
そう思ったから、私は姉に誘いをかけた。
「美月ちゃんにとって、祖父母が増えるのは嬉しいことではないですか?」
すると、横から彼が落ち着いたトーンで口を開いた。
私は彼の顔を覗く。
その顔は口元が笑みを描いていた。
「え」
「甘えられる人が増えるのはあの子にとって、悪いことではないでしょう」
「な、なによ……。
私葉月のことを話にきたのよ」
彼の言葉に姉が迷ったようにみえた。
「弥生姉、私のことを思ってくれるなら尚更お父様も交えて話しようよ」
「どうして」
「弥生姉お願い」
もしかしたら姉と父が和解できるかもしれない。
そうは思うが私はもう頼むことしか方法が思い付かない。
「一度だけでいいから……。
私と実家にいこうよ」
「葉月」
「私からもお願いします」
その願いに彼も重なるなら少し驚いた。
「どうして蓮池さんも頼むの?」
「葉月の願いですから」
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