解ける時間

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「久しぶりだね、共哉君」 「ご無沙汰してます。お邪魔しております」 居間には父がいて、にこやかな顔を私たちに向けた。 「葉月も、おかえり」 「た、ただいま……」 まさか父からおかえりだなんて言われるとは思わないから驚いた。 嫁いだのに、ただいまでいいのかと疑問に思ったが、父が笑んだから正解だと思えた。 「今日はどうしたんだ?」 父は私に目を向ける。 その目付きはやや強いものに変わった。 「お、お母様にお話があって……」 「そうか」 父は母になにかを確認するよう見つめて、次に彼を見た。 「葉月から聞きましたか?」 「なんの事でしょう?」 「弥生のことです。 二人でこのタイミングに家に来たということはそういう話だろう葉月」 父から姉の話を振られ、私は動揺した。 すると、私は肩を彼に抱き寄せられる。 「共哉、さん?」 突然の行動に驚くが、彼は父を真っ直ぐ見ている。 「弥生さんの話は彼女から聞きました」 「そうか……」 「はい。聞きましたが……。 弥生さんの件はお義父さんからお断りして頂いてもよろしいですか?」 「それでいいのか?」 「はい。お願いします。 弥生さんがどういうつもりかはわかりませんが、葉月との婚姻を解消するつもりはありませんので」 私は父に宣言してくれたその言葉に心を動かされた。 「そうか……。 ありがとう共哉君。 我が家のゴタゴタに巻き込んで申し訳ない」 「お父様……」 その上、頭を下げる父に同じくらい動揺した。
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