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「いえ大丈夫ですよ」
「いや、弥生が迷惑をかけてしまったね」
父は顔を大きく歪めた。
「弥生さんのことは葉月を心配した結果だと思うので」
「共哉君……」
父は申し訳なさそうに彼を見る。
「逆に弥生さんの提案は、葉月と本音で話し合えるいい機会になりました」
彼は私を寄せる手に力を入れた。
今回のことは悪いことばかりじゃなかった。
彼との距離を深められたし、私自身のことについても深く考えるきっかけになった。
後者については、まだ定まらないままだがそれでもぼんやりと過ごしている時よりいいと思える。
彼のために何かできたらと思うことはいけないことには思えなかった。
「寿のこともそうだ……」
「いえ」
「私がもっとしっかりしていれば……」
父はビジネス面のことをも悔やみ始める。
そして再び頭を下げた。
「本当に申し訳ないよ……」
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