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姉が取った行動から私の気持ちが変化したのは確かだ。
それは父も同じだったかもしれない。
お店で会った時の父の顔が頭に過る。
父は姉に会って何を思ったのだろう。
私を思う言葉を並べた父を思い出して、彼の腕を強く掴む。
「葉月?」
「共哉さん」
もしかしたら、父が姉とも和解できるかもしれないという思いが胸に浮かぶ。
「私、弥生姉とも話をしなきゃ……」
今回のことを弥生姉に話したくなった。
「え?」
「姉に今日のこと伝えたいんです」
「大丈夫か?」
彼の覗く瞳が心配の色に変わる。
その理由はよくわかったが、それでも私は頷いた。
「はい」
しかし、彼の表情は優れないままだ。
「俺も一緒に弥生に会うよ」
「共哉さん……」
やや近付く彼の顔を見つめてもそう思う。
少し、胸が痛い。
「いいよな?」
「わかりました。
お願いします」
私がお願いすると、少しだけ彼の表情は和らいだ。
それにホッとしながらもっと穏やかな顔が見たいと、頬に手を伸ばした。
「ん?」
触れた頬は冷たく、彼のものだと感じて私は少し笑む。
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