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「なぁ葉月」
「はい」
彼は長い口付けをした後に、唇を離して私を呼ぶ。
「俺は……」
「はい」
彼の瞳が少し逸れて、でもまた重なった。
「お前と結婚できて本当によかったと思ってる。
お義父さんに言ったことは本音だから」
さっきまでの悪戯な瞳は真剣なものに変わっていて、緊張するほどだ。
「と、共哉さん」
真っ直ぐに見つめたまま、彼は私の唇を親指でゆっくり滑らせた。
その動きが私の奥を刺激した。
「なぁ葉月」
「はい」
「葉月の気持ちが少しでも揺らぐなら、ここにいてくれないか?」
彼は揺らぐ心を見抜いているはずだ。
それでも私の気持ちを優先させて、その上責める気などない優しい言葉をくれることに、苦しくなった。
「共哉さん……」
「ん?」
「優しすぎです……」
私がそう言うと、彼は苦笑する。
そして耳元で「葉月だから」と囁いて、私にまたキスをくれた。
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