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それは思っていた通り。
彼の手に私の熱が移り、その温もりが全部を包むように抱き込められたらもう離れられなくなる。
「疲れてないんですか?」
もう一度私は窺う。
「大丈夫。さっきも言った」
「二回も聞いちゃうくらい、心配なんです」
自分でもわかっていると少しいいわけする。
「大丈夫だよ」
すると彼が目を細めるから、胸の奥が震えた。
「そうですけど……」
だけど、ドキドキさせる彼の手に捕まるのは嫌じゃない。
彼を心配していたくせに、簡単に流れていってしまう。
余計に疲れさせることをするのに、自身も求めてしまうのだ。
彼と重なるごとに好きも重なる。
彼も同じだろうか。
私を抱き締める彼をそっと窺うと、瞳が絡んでキスをくれた。
始まりは普通のものじゃなかったけれど、この幸せを今さら手放すことはしたくない。
そばにいてくれるだけでいいと言ってくれた、彼の思いに応えていいのなら、私はずっとそうしていたい。
熱くなる気持ちを胸に、彼にしがみついた。
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