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翌朝、彼のいないリビングで私は「もういない……」と、呟いた。
今朝は仕事が忙しいからだろう。寝てる私をそのままにして彼は出掛けていった。
二人で夜更かしをしたが大丈夫だっただろうかと、心配しても彼はいない。
昨夜の彼はとても情熱的だった。
やや久しいことがそうさせたのか、思い出すと熱くなる。
明るくなった朝に顔を赤くするのは恥ずかしく、私は奥に仕舞い込んだ。
彼が疲れていなければいいのだが……
私は彼より遅く起きたというのに、小さくあくびを何度と出した。
それが目立ったのか、宮前さんが心配そうにこちらに目を向けた。
「葉月さん寝不足じゃありませんか?」
「いえ、大丈夫です」
私は大丈夫だ。毎日の習慣でいつもの時間に起きたが講義も昼からで、ゆっくりできる。
「あの、共哉さん何時頃出掛けていきましたか?」
私の質問に、彼女は少し迷うような顔をした。
「宮前さん?」
もしかしたらものすごく早く出ていったのだろうか。
止まってしまった彼女を見ると、そうとしか思えなくなる。
「もうここへ来たときには、坊っちゃん出掛けられた後でした」
「えっ、宮前さんが来られる前にですか?」
「えぇ……」
宮前さんの来る時間はいつも早い。
彼は早くても宮前さんが家に来てくれてから出掛けていくのに、そこまで忙しいのだろうか。
「葉月さんは今日はお昼からでしたよね?」
「はい……」
やはり思った通りだったのに、申し訳ない気持ちが襲ってくる。
私はこんなにゆっくりできるというのに……
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