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「どこがいいかなぁ……」
私は彼のいない寝室のベッドで身体をうつ伏せにして呟いた。
「一週間……」
彼と結婚して出張でいない日以外、毎日共に過ごしている。
だが、長い休みをもらうのは初めてのことだ。
彼が買ってきてくれた海外旅行雑誌を下に、顔を埋める。
海外は高校の修学旅行で行ったことが一度あるだけだ。
彼が「暇があるときに眺めたらいい」と、言ってくれたけれど、たまには私から提案したほうがいいのだろうか。
いつも思い返せば彼任せだ。
結婚式まであと半年。その後旅行のためのお休みをもらう予定だから、早く決めなければ宿や飛行機が心配だ。
正直なところ彼と行けるのならどこでもよかった。
「うーん」
彼との時間を思い巡らす私は、後ろの気配に気がつかない。
「え、わ……」
急に視界が暗くなり、目隠しをされてそれに気づく。
「共哉さん……」
彼を呼ぶと視界が明るくなり彼が私を覗く顔がある。
「ただいま」
「おかえりなさい」
時刻は夜の10時過ぎ、今日も彼は遅めの帰宅だけど疲れを見せず、私に笑ってキスをくれた。
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