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「わっ」と、言う私の声は彼の胸の上で消える。
「椅子一つで足りたかも」
「でも、私見れません……」
くっつけたそれは二人で座れば確かにいらないけど、景色は眺められない。
しかし彼はそんな私の意見をまるで聞かないでやや強めに抱き締めた。
「ようやく落ち着いた……」
彼は私を抱き締めたかったのか。
そう思うと単純だが、今は景色も目の前の彼のほうに意識が向く。
「重くないですか?」
「全然、それに葉月痩せただろ?」
式に向けてほんの少しダイエットはした。
しかし体重はそう変化していない。
「そんなに変わってないですよ」
「そう?」
彼は私の脇腹を少し掴んだ。
食べたばかりのお腹にはそれはダメである。
「もう……」
唇を私は尖らせて彼を見つめるとすぐ上にある顔があって、それが近づくのがわかった。
私は目を閉じて彼を待つように目を閉じる。
彼のキスのくる瞬間をつかめるようになったのはいつからか。
やはり閉じた唇には彼の熱が落ちた。
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