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「気が早いが……子供の名前、新月からちなんで“朔”にしないか?」
「さ……く?」
「ほら、新月は朔月とも言うだろう」
私は彼の穏やかな声に頷く。
「響きは素敵ですね。男の子でも女の子でもどちらでもよさそう」
「女の子なら、“朔月”でもいいかもしれない」
彼は私が月が好きだから、こだわってくれているのかもしれない。
「たしかに可愛くて素敵ですけど、共哉さんの好きな漢字だって入れてあげたい」
互いに気が早すぎる話をしている。まだお腹に宿ってもない生命だが、真剣だ。
「俺自身、いいと思って言ってるよ。ほら、新月は満月になるまで月が徐々に満ちていくだろう。それと同じで健やかに成長できるように願いを込めた名前な気がしないか?」
彼が言うと、たしかにと感じてしまう。
新月の願いからそこまで結びつけられたのだろうか……
そう思うと彼はすごい。
「ちょうど今できれば、秋頃だろう。秋らしい名前でもある」
たしかに秋は月見もあるが、月が一番綺麗な季節であるような気がする。
「な?」
私は無言でそれに頷く。
すると、彼が優しい笑顔を私にくれた。
ーendー
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