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「共哉さん、これどうですか?」
「あぁ、いいんじゃない」
彼女は白のドレスを俺に見せるから、俺は首を傾げた。
「これにしようと思って」
「あぁ」
「弥生姉似合いそう……」
彼女が手にしたものはマーメイドラインのものだった。
彼女のものではなく、弥生のものを見せられて若干複雑ではあるが彼女の姉への気持ちだから真面目に選んでいた。
「なんか自分のものも楽しいけど、人のものって楽しい……」
「そうなんだ」
「はい。こういう仕事に就く人の気持ちがわかるかも……」
彼女は今三年でもし就職を考えるのなら動き始める時期である。
なるべく早く単位をとりたいと真面目に大学に通ってはいるし、資格をとるために試験も受けたりしている。
ただ俺としては卒業はさせても、働かせる気が全くなく、この手の話はなるべくスルーすることが多かった。
「なぁドレス以外のものも選ぶのか?」
「あ、はい。疲れました?」
「いや、そうでもないよ」
「じゃああと少しだけ……」
彼女の頼りない視線になるべく優しい笑みを返した。
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