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「今日もおやすみですか」
「あぁ……」
カウンター席で飲んでいた俺たちに店員が苦笑した。
ここは彼女の誕生日に連れてきた場所で、彼女と何度と訪れている。そう騒がしくない店内は二人でいると落ち着く。
多分葉月と同じくらいの歳のこの店員は、彼女が起きているときはほとんど話しかけてこない。
「ついさっきは普通に話していたのに、こんなに急に休まれては心配ですね」
「そうなんだ、なんとかならないかな」
色んな薬が発明されているものの、酒に強くなる薬はない。
それが出たら真っ先に買うのだが……
「どうでしょう、毎日慣らすと少しは強くなるとは聞きますが遺伝が大きいでしょうね」
「遺伝ね……」
「目が届かないところで飲まれるのは心配ですね」
「そう……」
もし彼女と成人後に出会っていたら、もしかすると誰かのものになっていたかもしれない。
それくらい危なっかしい。
「どうしますタクシー呼びましょうか……」
「そうだな、頼む」
隣の彼女はもう完全に目を閉じて、頭を小刻みに揺らしている。
俺はそれを肩に寄りかからせため息を吐いた。
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