密かな企み

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「私待ち合わせデートしてみたいんです」 そう言われたのはいつだったか。 「同じ家にいるのに?」 「はい」 「ふーん」 「共哉さんを待ってみたいんです」 同じ家に住んでいると待ち合わせなんてする必要はなく、常に出掛ける際は俺と共に家を出る。 俺はちっとも待ち合わせに魅力を感じないが、彼女は違うらしい。 それに何かあったらと、変に想像するから深く聞かないでいた。 しかし今、その日のことを思い出して、俺は少し眉を寄せた。 「迎えはいらないってこと?」 「はい」 「大丈夫?」 「あ、はい」 この家に住んでずっと彼女は車でしか移動させていない。 小さな買い物くらいなら出掛けるも、それ以外はどうだろう。 友人と買い物に行かせる際も、帰りは迎えを呼ぶように言ってあった。 「だが今日は雨が降りそうだ……」 俺は窓の外を見て、天気予報も見てないのにただ曇っている空に対し適当に言った。 「傘を持っていきます」
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