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あまりにも早く着いた俺に対し、彼女はまだ来ていなかった。
それに安堵するも、時間が過ぎるにつれ不安は増す。
なんとなく彼女は10分前くらいには来る想定でいた。しかし5分まえになっても現れず、俺は落ち着かなくなってきた。
待ち合わせの時刻を過ぎても現れない彼女に、すぐ連絡を入れる。
しかしそれは留守電に切り替わり、彼女が出る様子はなかった。
もしかすると事故に巻き込まれたのだろうか。
気が気でなくなり何度も着信を残すが、変わらない。
「葉月……」
何があったのだろうか。やはり迎えをやるべきだったと後悔するももう遅い。
どうすることもできぬまま15分を過ぎた頃、彼女が「共哉さん」と、俺を呼んだ。
「ごめんなさい、遅くなりました」
息を切らした彼女は怪我した様子もなければ、健康そうだ。
とりあえずほっとしたものの、とてもじゃないが笑えない。
「何があった?」
もしかしたらすごく怖い顔をしていたかもしれない。
しかしそれすら気遣えない。
「ご、ごめんなさい。電車を乗り違えちゃって……」
「それだけ?」
「はい……」
多く人が行き交う場所にも関わらず、たまらず彼女を抱き締めた。
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