SNS映え

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スマホで写真を撮るのが好きなМさんが死んだ。 同じクラスだった彼女は教室でもよく自撮りをしたり、友だちと仲良く写真を撮っていたのを覚えている。 Мさんは撮った写真をネット上に投稿するのが趣味で、共通のSNSを利用して彼女の写真を見ているクラスメイトは結構居た。僕もその一人だ。 投稿する頻度は日に50回くらいで、多いときには100回を越えていたかもしれない。 カラフルで可愛いケーキやアイスの写真、天使の羽が描かれた壁の前で撮った写真、妖精でも居そうな雰囲気の森林公園で撮られた写真など、SNSで見るとよく映えるものを沢山投稿していた。 SNS映えするМさんの写真。同じように可愛く撮りたいと真似したがったクラスの女子たちの間で、友だちや彼氏を誘ってその場所に行くことが流行っていたっけ。 Мさんが生きている間は。 彼女が亡くなってSNSに写真も投稿されなくなってから半年が経った今、Мさんの話題がクラスで上がることは無くなった。みんな別の何かに夢中になっていて、Мさんが訪れた場所に来る人も居ない。 今日だって、カラフルなスイーツを出しているこのお店に来ているのはクラスでもたったひとりだけ。 スマホで写真を撮るのが好きなМさんが、僕は好きだった。 この半年間、Мさんが死んだ事実を受け止めることが出来なかった。けれど、このままではいけないと思い、追悼の意を込めて、SNSに上がった写真から場所を探して彼女の思い出の地を回ることにした。 カフェのケーキやアイス、天使の羽が描かれた壁、森林公園……。 Мさんが来た場所で同じように写真を撮ったが、ネットに上げるつもりはない。誰が忘れても、僕だけは彼女のことを覚えていたい。それだけだ。 その夜、自室でひとり撮った写真を見返していたら、おかしな点に気付いた。 なんだろうこの黒い小さな粒は。 最初はただの汚れか何かだと思った。けど、今日撮ったどの写真にも黒い米粒のようなものが写っている。レンズが曇っていたわけじゃない。 自撮りでは天使の羽がうまく入らなかった僕自身が写った写真にも、鼻の上にホクロのような黒い粒があって……あれ、いま動いた? 黒い粒は鼻から頬に移動して、やがて画面から消えていった。その直後――
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