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ため息を吐き、ベッドに体を預けると、携帯が鳴った。彼氏からのメッセージだった。
――もうすぐ到着します。
ほっとした。それからほんの少し笑ってしまう。彼のメッセージはいつもこんな感じだ。業務連絡のような質素さで、ぶっきらぼうで。
そのときである。
携帯の画面が、変わった。
SNSのサイトにアクセスされている。思わず、小さく叫んだ。私は何もしていない。それなのに、勝手に画面が動くのである。止めようとしても、電源を切ろうとしても無駄だった。自分の指を全く関知してくれない。
入力画面になった。文字が辿々しく入力されていく。ぽこり、という音と共にあがった記事に、瞠目した。
――たすけて
――殺される
即座に心配するコメントが付くのを見ながら、すうと血の気が引いていく。
慌てて携帯を握り直した。今度はきちんと指先に反応する。自分の記事を消そうと、画面を操作したときであった。
違和感。
月曜日、上司に叱責されたのは夕方だった。けれど、記事があがっているのは午後である。火曜日、デートをしたのは午後であるが、こちらの記事は午前にあがっている。
その次の日も、次の日も、まるで予知しているかのように……。
手から力が抜ける。音を立てて落ちる携帯が、また勝手に起動した。
――なんでもありません。気にしないでください。
チャイムが鳴った。
彼氏が、来た……。
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