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「・・・傷が・・・!?」
酷い傷だけでなく、小さな細々とした傷も、傷がついていないところを探す方が難しいとさえ言わしめた俺の体から、ありとあらゆる傷が消え去っていた。
すると、腕の中の人の子の重さが一気に増えた気がして、人の子を見る。
そして、気付いた。
ゆらゆらと揺れるのは金の髪、元から色素が薄いのであろう顔は、真っ青になっており、一瞬見えたはずの瞳は、ばっちり閉じられていて、垣間見ることさえできない。
そして、小さな体から急激に消え去った魔力は、傷を治した治癒の魔法と、俺を取り巻くようにかけられた守りの魔法に使われたようで、人の子の体から感じられる魔力はゼロに近い。
「お、おい・・・!」
魔力欠乏症だと、日ごろ足りないと言われる頭でも容易に想像がついた。
魔力欠乏症というのは、魔力を身に宿して生きるこの世界の生き物に最も恐れられる症状だ。
その名の通り、体内の魔力が生きるための値に達していないときのことを言う。
この人の子のように自ら力を行使してこの症状になる者、他の何かから魔力を奪われてこうなる者といる。
前者は多いが、しっかりと魔力が安定し、頑健な体を持っていれば、魔力欠乏症になっても、自然過回復により、以前より増加するとさえ言われる。
しかし、それは魔力が安定していて、健康な体である場合だ。
この人の子のように生まれてそれほど経っていなければ、魔族でさえも魔力は安定していないし、なにより健康とは程遠い体をしている。
この病症は、最悪死に繋がる。
脳内を最悪の光景が掠め、はやる心のままに走り出す。
早く、早く、はやく、はやく!
今まで経験したことのないほどの速度を感じるが、それをどうこう思う前に、焦りが先に出る。
この小さな恩人を死なせてしまっては、俺はフェンリルの長たる資格さえ持っていない・・・!
早く、アイツのところへ、シノのところへ!
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