六年後の事件

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主人公side 私が父様と会って早六年。 この六年間、たくさんの初めてで溢れていた。 初めて魔法を使って、初めて家族と一緒にお昼寝して、初めて他の人に優しくされて、初めて魔獣を倒して、初めて皆でお買い物をして・・・。 ゆっくりと家族の形に纏まった私たちは、今ではすっかり近くの村でも評判の、仲良し家族だった。 「父様(ととさま)!ただいま帰りました!」 森で木の実の採取を終え、家に飛び込む。 部屋の奥で本を読んでいた父様が顔を上げて、頬を緩める。 「セツナ。お帰り。何を採ってきたんだ?」 「ワイルドベリーを採ってきました!ニンジンとジャガイモ、フェルス(トマトみたいな根菜)は途中で会った村の人に貰いました!」 「そうか。あとで俺からもお礼を言っとくな。」 「はい!」 父様が私の頭を優しく撫ぜる。 八歳になった私は、同い年の村の子より発育が遅く、年下に見られることが多い。 「たっだいまー!」 「おかえりなさい!ガイ兄様!」 バン、と大きな音を立てて帰ってきたのは、ガイ兄様(にいさま)。 四歳になったとき、皆の呼び方を変えた。 お兄さん、お姉さん、お父さん、と呼んでいたのだけれど、それだと距離を感じてしまうと思ったため、誕生日に決められた日を境に、父様、姉様(ねえさま)、兄様と呼ぶようにしたのだ。 初めてそう呼んだときの、全員の顔は今でも忘れられない。 嬉しいような、悲しいような、といった複雑な顔をして、私をそれぞれ抱きしめてくれた。 今では慣れているけれど、時々泣きそうな顔をするようになった。 いつか、その理由は話してくれるだろうと、気長に待っている。 次にアザミ姉様とセシル兄様が帰ってきた。 二人は私の頭を撫ぜる。 「今日は私の魔法からね。上級魔法から始めるわよー。」 六歳を過ぎてから、座学のみから実技に移行した。 今では上級魔法以下のほとんどの魔法を使えるようになった。 あとは、実戦での応用に慣れるだけだと言ってもらえている。
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