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主人公side
温かい光に包まれて、ゆっくりと瞼を押し上げる。
きらきらと輝く陽の光はやけにこちらに届きすぎていて、違和感を覚えるほどだ。
第二の人生と言われたからには、もう一度生まれなおすのだと思っていたのだけれど、そうではないのだろうか。
そう思った瞬間、自分の状態に気付いた。
ざんばらの白髪、ぼろぼろのワンピース、小さな手のひら。
周りに広がるのは、青々と茂る草木。
華奢な体は常に空腹を叫んでおり、力を入れたら折れてしまうのではないかと思う程に細い。
自分の体を映すものがないので何とも言えないが、この小ささだと一、二歳といったところか。
話したり歩いたりがようやくできる年ごろだ。
だが、喉が渇いているのか、張り付いたように声は出ない。
体があまり動かないことから、随分と衰弱していることが分かった。
そして、ここは森の中。
うん、第二の人生の幕引きも近いね。
誰かが通らなければ、ここで野垂れ死ぬんだろうな。
半ば諦めて、瞼を閉じていく。
元々運は無い方だから、今回も助からないだろう。
いや、悪運は強いし、大丈夫なのかもしれないけれど。
けれど、ゼウスにせっかく貰った第二の人生、楽しんで生きたかったな・・・。
そこまで考えたとき、ふと遠くの方から人が争うような声と、荒い息の音が聞こえてきた。
ふむ・・・ここまで耳が聞こえたことはないし、これがゼウスの加護なのかな?
ふと、ガサガサと草木がこすれる音がした。
緩慢な動きのまま瞼を開く。
音のした方を見ると、銀色の髪と銀色の目、そして頭の上でぴょこぴょこと動くもふもふした耳を持ち、日に焼けたの肌の青年が、呆然と立っていた。
「・・・なんでこんなところに、人の子が・・・?」
小さな声でそう言うと、青年は私に近寄ってきた。
近寄られて気付く。
青年はあちこちに傷を負っており、特に足の怪我が酷いのだということ。
そして、先程から聞こえてくる声は、彼を追っているのだということ。
青年は私を気遣うように、おそるおそる抱き上げる。
ああ、優しい人だ。
自分の怪我を顧みず、こんな見ず知らずの子どもを気遣えるなんて。
せめて、傷の手当てでもできればいいのに・・・。
そう思った瞬間、私の意識は途切れた。
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