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晩ご飯の後片付けをしていると、なんだか背中に寒気を感じた。
・・・・・・ものすご~く視線を感じる。
たまらなく気になって、くるりと振り返るとこちらを凝視しているユーゴがいた。
「・・・・・・そんなに見つめたってお菓子はないわよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
晩ご飯食べたばっかりでしょう? そんなにお菓子ばっかり食べてると大事な牙が虫歯になって無くなっちゃうわよ」
「あなたのうなじが綺麗で見てた」
「!?」
・・・・・・そうだ、ユーゴは吸血鬼なんだよね。
いつもお菓子ばっかり食べてるヘンな人じゃないんだよね。
こんな月夜に、血が恋しくなることだってあるわけだ・・・・・・って、それってマズイ!!
私が慌てて右往左往していても、ユーゴの視線は一向に動かない。
「あ、あの、ユーゴ??」
ユーゴが視線を動かさず、無表情のままボソリと呟いた。
「吸血鬼は人間に恋をしてはいけない・・・・・・」
「え? なに?」
ユーゴは私の声には反応せず、少しだけ眉間に皺を寄せて、ちいさくため息をついて俯いた。
・・・・・・なんだか私が思ったことと違うことで悩んでるみたい?
私はタオルで手を拭いて、ユーゴの目の前に座った。
「ユーゴどうしたの? 悩み事?」
「・・・・・・・・・・・・」
ユーゴは黙ったまま、動かない。
・・・・・・なんだろう、なにか言いたいことでもあるのかな。 それとも、本当に悩み事があるのかな。
人間界ならではの何かってもので、私にはわからない悩みとか・・・・・・。
シーンとしたキッチンにいたたまれなくなって、私は席を立ってユーゴに声をかけた。
「お茶でも淹れようか?」
その声にやっと、ユーゴがピクリと顔を上げた。
「・・・・・・甘いのがいい」
私は声を発してくれたことに少し安心して、ご要望どおり甘いココアを作ることにした。
お湯を沸かすためにレンジ台に立ちユーゴに背を向けると、ユーゴがぼそぼそと喋り始めた。
「・・・・・・虫歯になって牙が抜けたら、どうなるんだろう?」
「え?」
・・・・・・ユーゴ、そんなこと悩んでいたの!?
ものすごく真面目な顔をしてたから、深刻なことかと思えば。でも、なんだかちょっと安心してしまった。
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