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「うふふ、やだユーゴ。そんなこと悩んでいたの? お菓子食べるのにも困るでしょ、歯が痛かったり、無くなったりしたら」
お湯が沸いてココアを淹れながら笑いかけると、ユーゴがまた真剣な顔で呟く。
「吸血鬼は人間に恋をしてはいけない。血を吸えなくなるから・・・・・・」
いつもとは違う、真剣な声の思わぬ言葉に、ちょっとドキっとする。
砂糖をてんこもりに入れてあるココアを黙ってユーゴの前に差し出すと、ユーゴはふっと微笑みを見せて言った。
「・・・・・・じゃあ、元々血を吸わない吸血鬼なら、人間に恋をしてもいいのか?」
誰に問うわけでもない台詞を吐いて、ユーゴが私を見つめなおす。
そういえば・・・・・・ユーゴは冗談で血を吸いたいと言ったり、吸う仕草をするけれど、私はまだ一度も本当の危機感を抱いたことはない。
『血を吸わない吸血鬼』・・・・・・?
「ねえ、ユーゴ・・・・・・」
「あの・・・・・・」
ふいにユーゴが、笑顔を見せた。さっきとは違う柔らかい視線に私は顔が赤くなった。
「・・・・・・ユーゴ?」
ユーゴはココアを一口飲むと、さらに柔和な顔を見せた。
「美味しかった。ありがとう」
ユーゴがカップの縁にそっと指を乗せ、なぞる。
「・・・・・・それと、やっぱり私は、あなたが、好き、だ」
急にそんなことを言うので、私はまた顔が赤くなってしまった。
「・・・・・・あ、え、うん」
私はココアを飲みながらマグカップで照れた顔を隠した。
どうしちゃったのよ、今日のユーゴはなんだか変よ。
「ココアには、マシュマロを入れると、さらにおいしいと思う・・・・・・」
ユーゴが物欲しげに棚を眺める。
・・・・・・!!
もう、ちょっと甘い雰囲気になったと思ったら、ユーゴは本当に『甘いもの』のことばっかり!
ユーゴのバカ!
「もう! ご飯食べたばっかりでココアも飲んでるのに調子に乗らないのっ!!」
「・・・・・・残念」
そう言いながらも、ユーゴの顔は笑顔のままだった。
ユーゴってほんとに何考えてるんだかわからない・・・・・・。でも、私の心はココアのせいだけじゃない、甘くて暖かい気持ちが少し残った。それと同時に・・・・・・私はユーゴが言った、『血を吸わない吸血鬼』の意味を考えていた。
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