第1章-2

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 私の首に噛み付いているユーゴを力いっぱい押しのける。  でも、肩をがっちりつかまれていて、びくともしなかった。  「う……い……痛い……!」  すごい力……肩の骨が砕けそう……。  「ユーゴ……やめて、お願い……やめて……」  あまりの痛さに声がかすれる。  私はとっさに服の下からペンダントをひっぱり出した。  それがユーゴに触れると、バリバリと久しぶりに聞く音が聞こえてくる。  「くっ!!」  ユーゴは私から飛びのいて、呆然とこちらを見つめてきた。  「ユーゴ、わかる?」  「あっ……」  はっと我に返ったユーゴが、私の首筋を見つめている。  そこにはぬるっと生温かい感触があったから、少しだけ血が出ているのかもしれない。  「平気よ」  私は慌てて首筋に手をやって、ユーゴに噛まれた辺りを押さえた。  「……とうとう……やってしまった……」  ドン……  ユーゴはフラフラと後退って、壁にぶつかった。  その拍子に、どこからか、智也君が渡した銀のナイフが入っている箱が滑り落ちてきた。  包みを失ったその箱は、落ちた弾みで自然に蓋が開く。  美しいほどに冷たく輝くナイフが、リビングの床に転がって、澄んだ音を立てた。  「あっ……」  「お願いだ。もし、次にあなたを襲ったら……そのナイフであなたが私に決着をつけてくれないか?」  「どうして……そんな意地悪なこと言うの? 無理に決まってるじゃない」  「意地悪じゃない。これはかなたさんにしかできないこと。……かなたさんにだけにしてもらいたいから」  「ダメよ、無理……」  「お願い……お願いだから……」  ユーゴは泣きそうな顔をしていた。  多分、私も同じような顔をしている。  「できない……できないよ……」  そんなことできないよ。  「お願い、私は……もう、自分で……自分を、抑えられない……」  「嫌だ、嫌よ……ユーゴが……いなくなるなんて……絶対嫌よ……」  ポトン、ポトンと2人分の涙が、銀のナイフに滴り落ちる。  私は、その冷たい輝きから逃げるように部屋を飛び出した。  時間は淡々と流れていく。  ユーゴが私の血を吸おうとしたことなんて、悪い夢だったみたい。  でも、あれからユーゴは私を避けるように部屋に引きこもったまま。  とうとうご飯の時も部屋から降りてこなくなった。  
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