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このままじゃいけないってわかってる。
わかっていたけど、どうすればいいのかわからない。
だって、ユーゴが吸血鬼だって事実は変えようがないから……。
「はあ……」
「溜息ばかりついているくらいなら、ユーゴ本人に会いに行ったらどうだい?」
「そうだぞ。さっき、夕飯届けてきたら、お前のこと呼んできて欲しいって言ってたぞ?」
「えっ?」
会いたいって言ってくれるのは嬉しいかったけど、ちょっと驚いてしまった。
だって、私がドアの外から声をかけた時は、部屋に入られるのをものすごく嫌がっていたのに。
「いざとなったら、僕たちを呼べばすぐに助けてあげるし、行ってきたら?」
「そうそう。それに。お前には、無敵のペンダントがあるんじゃねーの?」
「フロリア、ロイ……」
「ほら、行っておいで。勿論、君が僕に乗り換えると言うなら、別だけどね」
「きったねーぞ。だったら、俺だってありだからな」
「何を言ってるんだい? 君のようながさつな男では、傷心の女性を慰められるわけがないだろう?」
「はっ! お前なんか、泣いてる女の前で別の女を口説いて、もっと泣かせるんだろうが」
「ふふふ。2人ともありがとうね。私、ユーゴの所に行ってくるよ」
2人が空気を和ませてくれたから、なんだかちょっと前向きになれたかも。
「やれやれ。僕は別に君を元気付けようとしていったわけじゃなくて、本気のつもりだったんだけどね」
「ほんとだぜ」
ぶつくさ言ってる2人を置いて、私はユーゴの部屋へ向かった。
「ユーゴ、入るわよ」
私は、ユーゴの返事も待たずに、ドアを開けて部屋の中に入っていった。
「ダメだ! 入ったら、絶対ダメ!!」
「えっ? だって、私を呼んだんじゃないの?」
「ダメだ!」
驚いてる間に、ユーゴが飛び出してきて、私を押し戻そうとする。
「ユーゴ? ロイに、私を呼んできてって頼んだんじゃなかったの?」
どうしちゃったのかな?
わけがわからなくて首をかしげた途端。
「くっ……」
「ユー……あっ!」
痛いぐらいに肩をつかまれて、無理矢理ユーゴの方に引き寄せられた。
ユーゴの牙が肌に触れる。
チクンとかすかな痛みが走る。
すぐにユーゴの腕が、私を少しだけ押し戻した。
「ダ、メだ……呼んだのは、私だけど……私じゃない」
「どいうこと?」
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