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「零! お前、あの人のこと裏切ったのか!」
黒鳥との通信をスマホ越しに訊いていたのか、陽炎に零に飛びかかってきた。
※勿論、陽炎は、スマホの中にいるので実際に飛びかかることは出来ない。
「……だとしたら」
悪びれる様子もなく、陽炎の言葉に返事を返す。
「なんでそんなことした? 黒鳥恭輔はお前の恩人だろう?」
「恩人だよ? あの人がいなかったら、今の俺はきっといない」
「だったら……」
陽炎の言葉を遮るように、零が、陽炎の頭をポンポン叩く。
勿論、陽炎は機械なので直接触ることはできない。
「……お前、まだ春村瑞穂のことが好きなのか?」
「……」
零からの突然の「春村瑞穂のことが好きなのか?」の質問に、陽炎は、口を開けたままその場に固まってしまう。
「……ふふふ。感情はだけは正直だな? 人間もAIも。陽炎。俺は、もう大丈夫だから。行けよ! 蜩朧の所に!」
零は、そんな陽炎の様子に、笑顔を見せると彼が投影されているスマホに手を伸ばし、慣れた手つきで、暗証番号を打ち込む。
すると、1秒も経たないうちに画面越しの陽炎の影が消え始めた。
「やややや止めろ!」
陽炎は、すぐさま自分の身に起きた状況を理解し、慌てて零の手を…・・
しかし、その手を陽炎は掴むことはできない。
「……陽炎ありがとう!」
「ゼゼゼ…………」
叫びを虚しく、陽炎は、零のスマホから完全に消え、画面に……
『陽炎を Forward 転送しました』
と言う画面だけが残った。
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