第1章 どこにいても

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 私にとって身近な人の死は、お父さんだ。私が生まれる一か月前にお父さんは死んだ。生きて会うということは、そんな私にとって奇跡と同じ。どっちかが死んでいたら、どうやっても触れ合えないんだから。  そんな当たり前を、同級生達はあまり意識もせずに安穏と暮らしている。彼らと馴染めないのはきっと、そういうことも関係しているのだろう。寂しいかと問われたら、寂しいと答えたい。でも、寂しいけれど誰でもいいとは思わない。  私にとって、この寂しさを与えてくれる晴馬は、死んだお父さんと同じ立ち位置にいる人だから。彼の存在の意味を、大きさを、切ない痛みが私に教えて来る。特別な人は人生にはただ一人で十分。  それに、傍にいないからこそ特別なのかもしれない。無理矢理な感じもあるけど、今はそれで納得している。この離れている距離に触れ合う時間はきっと、これから先生きていく為には必要な経験なのかもしれないじゃない?  そうでも思わないと、やってられないよ。  忘れたくても忘れられない人が、心に住み着いてしまった人にしかわからない葛藤の末の着地点。誰にもわからなくてもいい。私がわかっていればそれでいい。
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