第1章 どこにいても

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 だから、晴馬がどこにいても私には関係ない。あの殻の中の孤独は、私のこの孤独とどこかで繋がり合っているから。上手く説明できないけど、私達は今だって繋がっている。目を閉じたら視えてくる黒く暗い深淵のさらに奥で、私達は抱き合っている。そうとしか感じられないのだから、しょうがない。  ある夜、私は月に意識を飛ばして上空から地球を見下ろすイメージをして晴馬を感じた。こんな方法では実際に探し出すことなんて無理だけど、空想の世界は自由だから固い事言わないで勝手に今の彼をイメージするだけ。この目では見たことがない東京上空は薄暗い霞みに覆われて、(うごめ)く無数の魂の輝きの中に彼を見つけ出すことはやはり困難な気がした。  天の川の中に浮かぶひとつの恒星の輝きだけを見続けられれば、きっと私は晴馬の魂を見つけることができるのかもしれない。何度か目のトライをしても、それは大海で難破船を見つけるよりも遙かに難しくて、あと少しのところでいつも目が醒めてしまう。  人間は放つエネルギーは大きく何種類かに分類できる。同じグループのエネルギーは個人として区別するのは大変だ。  グッタリと疲れて眠る。この五年間、私は人日々こんな風に過ごしてきた。
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