第1章 どこにいても

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 私達は良く似ていた。お互いにとって必要な存在だと思ってしまうほど密着した仲だった。  それなのに、突然別れがやってきた。東京の大学に行くなんて話は寝耳に水で、聞いた時はあまりにもショックで何も考えられなくなってしまった。  呆然としている最中に、晴馬は夜逃げするように消えた。別れ話が苦手でも、せめて最後ぐらいちゃんと顔を見たかった。  私が泣く姿なら散々見たくせに。私の前で涙を流す彼の顔だってちょっとぐらいなら知っている仲なのに……。水臭いし、裏切りだし、嘘つきだし、ムカつく。  まだ怒っているけど、元気ならそれでいいや。そんな風に思えるようなったのは、最近だ。  見捨てられた子猫は、かつてのご主人様を恨むものだろうか?  いや、きっとどんな子猫も、見えなくなったご主人様を探し求める旅をするに決まっている。
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