赤い橋

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週明け町役場に警察から電話がはいる。 また例の赤い橋から飛び降り自殺者が出た。 職員Aは、溜息をついて現場へ向かう。 ここK県の山陰にかかる赤い橋は、 有名な自殺の名所だった。 橋を基点に不可解な心霊現象も数多く噂されている ー例えば、 赤い橋脇の電話ボックスには、血濡れの自殺女が 青白い光に照らされ佇んでいるとか、 赤い橋を深夜に車で通ると、フロントガラスに ベタベタと無数の手形をつけられたとか。 人の噂とは怖い。 噂が噂を呼び、若者が肝試しと称して深夜に この橋でバカ騒ぎし、 心の弱っている者の投身自殺も後を絶たなかった。 言霊というのはあるのかもしれない。 Aが担当する頃には、もうすっかり赤い橋は禍々しさを備えた立派な心霊スポットと化していた。 Aには少し霊感があり、いつも珠数を左手首に巻いていたが、赤い橋に向かう時は更に塩や酒、水、線香などを装備していた。 それでも赤い橋を検分して帰る頃には、数体の霊が取り憑いて、Aに酷い頭痛を与える程だ。 現場に着くとK県警のパトカーが数台と、 赤い橋近辺の大学分寮の野次馬が集まっていた。 Aはいつもその野次馬達を忌々しく思っていた。
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