第一章 アルベール(2)

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「何さ」  ニコルは思わず唇を尖らせてしまう。 「本当にニコル様は分かりやすいと思っただけです。そんなに露骨な顔を、伯爵の御前でしてはいけませんよ」  まるで子どもを窘めるような物言いだ。 「分かってるよ。そんなことする訳ないだろ」 「そうですね。伯爵の話をニコニコと聞いていらっしゃる姿はとてもご立派だと思います」 「……うん」  ニコルは小さく頷いた。 「ただあまりご無理はなされないよう、お気をつけ下さい」 「ん」 「今日は何時頃、お迎えに参りましょう」 「いつも通り午後四時に」 「了解いたしました」  馬車の列が消化されていき、門前に到着する。  アルベールが反対側から下り、ニコルのために扉を開ける。 「ありがとう」  ニコルは言って馬車から降りた。 「いってらっしゃいませ」  アルベールに見送られ、敷地内に入る。
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