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ニコルが中等部の頃から、イン爺の力を借りながら交配を続けているものだ。
目指すは一年を通して、混じりっけのない漆黒の薔薇を生み出すこと。
しかしまだ一度もうまくいったことはない。
それがニコルにとって密かな目標になっていた。
早く完成された黒を見たい……そう思いながら毎日毎日足を運ぶこともまた楽しみの一つだった。
病気になっていないかを葉の形を見ながら確かめる。
病気になっていれば、葉っぱが波打たり、変色したりする。
(大丈夫みたいだ)
ほっと胸を撫で下ろした。
「ニコル様。そろそろ校舎に向かわれたほうがよろしいかと。遅刻してしまいますよ。あとは私めがやっておきますので」
「ありがと。後はお願いねっ」
つい手入れをしていると時間を忘れてしまう。
慌てて温室を後にした。
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