第一章 アルベール(2)

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 リューディック王国は大陸全土を支配している国家である。  国王を戴(いただ)き、厳格な身分制度の下、支配されていた。  貴族の男子は将来の王室の藩屏(はんぺい)たることを求められ、建国以来、二百年あまりの歴史を持つ王立学院への入学が義務づけられている(女の子どもたちのためには別途に女学院が設置されている)。  学院は、周囲を壁で囲われた城塞都市・グリーンベルグの西側で広大な敷地を有し、関係者でなければたちまち道に迷ってしまうほどだ。  学院内には初等部、中等部、高等部が同居しており、貴族の子どもたちは四歳から入学し、十二年あまりの期間をこの学舎で過ごすことになり、歳を重ねるごとに利用できる施設などが広がっていく。  王家の守護獣たる獅子の紋章のついた黒光りする高等部専用の校門の前ににはずらずらと、子弟たちを見送る、有蓋(ゆうがい)の箱型馬車の列が並んでいる。  これが学院の朝の名物で、王都の市民たちがこっそり見物に訪れたりもして、王都のちょっとした名所という側面も持っていた。
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