連れ添いの儀

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都会でも田舎でもない、それでいて閉鎖的なとある村には、何時からあったのか、おぞましい風習があった。 そんな村に、若い夫婦が越してきた。 二人は、働き者で気立ても良かった為、直ぐに村に溶け込み村人達とも仲良くなった。 ゆったりと流れる時の中、長らく待ち望んでいた赤子を授かった夫婦は、喜びと幸せに浸りながら元気に産まれてきてくれるのを祈り、その日を待ち続けた。 その矢先、地主の子供が怪我が元で亡くなった。 金持ちとはいえ、厳かに執り行われた葬儀に参列した夫婦は、最悪な形で悪しき慣習を知る事になる。 家に着くなり、男は村人達に縛り上げられ女は床に押さえ付けられた。 「いきなり何をするんだ!妻を放してくれ!」 「地主の子が亡くなったらのぅ、その子が寂しがらんように、その年は、腹にいる稚児も孕んだ事が分かった子も皆、連れ添いの儀で贈ってやるんじゃよ」 「心配せんでえぇ。赤子の顔は見せてやる。地主の子と逝けるとは、ほんに幸せな子じゃて」 「貴方、助けて!!止めて!!」 「やはり、余所者は駄目じゃな、他所に言いかねん始末しろ。さぁ。皆の者、儀式を始めよう」 生きながらに腹を裂かれた妻の絶叫と、無理矢理取り出された我が子を認知した瞬間、鎌で喉を一線された夫は呻き声すら洩らせず絶命した。 産み出された子は、その場で心臓をひと突きされて命を終えさせられると棺に納められた。 「安心せい。お前の父と母も一緒じゃ。寂しくはなかろう?」 「どうして……どうして……?……私達の……私の……赤ちゃん、何処?返して……返してよ………………返せエエエェェェッッーーーーー!!」 痛み・怒り・哀しみから、鬼の形相に変貌を遂げた女は、呪詛を吐きながら死んでいった。 以来、腹を真っ赤に染めた女が妊婦を襲うという怪奇が起こり始め村が消えた。 そして現在、村は風化して誰の記憶にも無くなったが、それは怪談話として語り継がれ、それを依り代にして女は生き続け、裂かれた腹を撫でながら、我が子を探し求める。
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