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恋のはじまり(投稿作品)
何をやっても上手く行かない日というのはある。
今日がそういう日だった。
天気予報では晴れだといっていたはずなのに、起きたら雨。曇天は日光を遮って部屋を薄暗いままにしてくれたために、目が覚めると出かける時間の十分前。
大急ぎで身支度をして、雨が足元に跳ね返るのをお構いなしに駅まで駆け抜けると、溢れかえるホームの人だかりで遅延していることがわかる。こういう日に限って、朝からミーティングとやらが入っている。
イライラしながらスマホを取り出して上司にLINEすると、激怒のスタンプマークだけ返ってきて、さらにげんなりする。
このまま会社に行きたくないな、とホームで満員電車を2本ほど見送ってやっと次は乗れるかとぼーっとスマホを見ていたところ、後ろから突然の衝撃。
――っ!!!
人ゴミをかき分けて進むサラリーマンに突き飛ばされる。
なんとか足元は踏みとどまったものの、代わりに手からすっぽ抜けたスマホが綺麗な弧を描く。
――待って、待って…!
慌てて手を差し出して掴もうとするも手は虚空を掴み、スマホは綺麗にすり抜けていった。
線路脇にダイブした自分のスマホを見つめて、がっくりと肩を落としてため息をつく。
――今日は厄日か……。
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