恋のはじまり(投稿作品)

1/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

恋のはじまり(投稿作品)

何をやっても上手く行かない日というのはある。 今日がそういう日だった。 天気予報では晴れだといっていたはずなのに、起きたら雨。曇天は日光を遮って部屋を薄暗いままにしてくれたために、目が覚めると出かける時間の十分前。 大急ぎで身支度をして、雨が足元に跳ね返るのをお構いなしに駅まで駆け抜けると、溢れかえるホームの人だかりで遅延していることがわかる。こういう日に限って、朝からミーティングとやらが入っている。 イライラしながらスマホを取り出して上司にLINEすると、激怒のスタンプマークだけ返ってきて、さらにげんなりする。 このまま会社に行きたくないな、とホームで満員電車を2本ほど見送ってやっと次は乗れるかとぼーっとスマホを見ていたところ、後ろから突然の衝撃。 ――っ!!! 人ゴミをかき分けて進むサラリーマンに突き飛ばされる。 なんとか足元は踏みとどまったものの、代わりに手からすっぽ抜けたスマホが綺麗な弧を描く。 ――待って、待って…! 慌てて手を差し出して掴もうとするも手は虚空を掴み、スマホは綺麗にすり抜けていった。 線路脇にダイブした自分のスマホを見つめて、がっくりと肩を落としてため息をつく。 ――今日は厄日か……。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!