第二章 落ちこぼれ

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 幻影騎士団は、潜入任務において必ず二人一組(ツーマンセル)で行うのが基本としている。一人は内部、もう一人が外部から調査するのだ。万が一、片方にトラブルがあった場合、すぐに対処するためだ。  リオンは沈んだ声で、淡々と本日の報告をする。  「潜入は無事終了。特に変わったところはなかった。ただ生徒達のおかげで、精神的苦痛を強いられた。早く終わらせて帰りたい」  「そ、そうなんだ……でも、始まったばかりだし、二人で頑張ろう?」  ミリアの励ましを聞き、リオンはため息を吐くと、  「……そうだな。――それで早速なんだが、お前に調べて欲しいことがある」  「ここ数年間の入学した生徒及び、転勤してきた教師の詳細な資料だよね?」  流石はミリアだ。言わんとしていることをすでに把握している。  スパイとしてこの学院に潜伏しているのなら、学生か教師になりすましている可能性が極めて高い。得た情報と照らし合わせ、この学院にいる全員の素性を調べ上げ、過去に問題を起こした者や怪しい点がある者を絞り込んでいく。  生徒、教師合わせて在籍数は三千人ほど。これをすべて調べるにはかなり時間がかかるが、それは帝国の汚れ仕事を請け負う幻影騎士団、この程度の仕事は朝飯前だ。  「二日待って。また連絡するね」  「了解。よろしく頼む」  通話を切ると、リオンは壁に背を預け、天を仰いだ。     
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