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この世に存在するすべての万物・事象には、それを構成する〈情報体〉がある。その情報体を、魔法陣によって書き換えることで超常現象を引き起こす――この技術を、『魔術』と呼んだ。
リオンは、床に描かれた術式の形や記号から精霊や悪魔を召喚する類のものだと判断した。だが、これほどの規模のものは今まで見たことがなかった。
「描かれてからしばらく、使われた痕跡がないな……。とりあえず、こいつは帰ってから調査を――ッ!」
突如、頭上から何かが接近してくる気配を感じたリオンは、即座に飛び退いた。
刹那。ビュンと空を裂いて、さきほどリオンが立っていた場所に、何か重いものが衝突した。
ドゴンッ!
まるで隕石が落下したような凄まじい轟音とともに、地面が抉れ、風圧で砂塵が吹き荒れる。
宙でふわりと一回転して着地したリオンは、砂埃が舞う中佇む大きな人影を確認した。
徐々に視界が晴れるとともに、その影の主がはっきりと姿を現す。
それは、巨漢の大男であった。全長二メートルほどあるだろうか。筋骨隆々なその肉体は、鋼のように強靭で見る者を圧倒する。獲物を狙うギラついた眼は、しっかりとリオンを見据えていた。
「――お前は何者だ?」
腰の剣に手をかけ戦闘態勢を取りながら、リオンは謎の襲撃者を問いただした。
だがリオンの質問には答えず、大男は姿勢を低く構え、獣の如く雄叫びを上げた。
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