第二章 落ちこぼれ

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 エルネクス公爵家。マグナリア帝国の建国以来、代々王室に仕えてきた大貴族。優秀な魔術師が多く、帝国最強の銀翼の騎士団の魔術騎士を最も多く輩出している名門中の名門だ。  魔術師の素質は遺伝に深く関係していると言われている。貴族生まれの女性魔術師にとって、優秀な子を産んでいくことも義務なのだ。だが、彼女にはその素質がなかった。優秀な魔術師にはなれない。優秀な遺伝子を残すこともできない。  家でも学校でも、「落ちこぼれ」や「欠陥品」と蔑まれてきたのだろう。それはつまり、彼女は魔術師としても、そして女性としても価値がない――そう言われているのだ。  彼女がこれまで受けてきた苦痛は、リオンには到底想像できるものではなかった。  「クラスメートのあたしに対する反応も見たでしょ? まるで腫物でも触るみたいな態度、蔑んだ視線、陰湿な悪口。でもしょうがないのよ、ここは魔術学院。実力がすべてなんだから……。これでわかったでしょ? あんたも余計なことに巻き込まれたくなかったら、これ以上あたしに関わるのはやめることね」  自傷ぎみに言い放ったスフィアの目は、深い悲しみで覆われていた。  彼女はずっと一人だった。友達も作らず、周りから何を言われようとも勉学に励んでいた。     
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