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本当は優しい心の持ち主なのだろう。素っ気ない態度も、自分のせいで他人が傷つくことを恐れたから。リオンを遠ざけようとしたのも、編入したばかりの彼を面倒ごとに巻き込まないため。
彼女は強い人間だ――リオンはそう思った。
自分もかつて、彼女のように強い心を持っていれば――そう思わずにはいられなかった。
「――事情はわかった。じゃあ早速、勉強を教えてくれないか? 皆より少し遅れてるから少しでも追いつかないとな」
「――はあぁぁぁッ!?」
突如、スフィアが素っ頓狂な声を上げた。
「おい、ここは図書館だぞ。静かにしろよ」
「いやちょっと待ちなさいよ! あんた、あたしの話聞いてた!?」
「聞いてたさ。でもだからって、俺がスフィアと距離を置く必要なんてないだろ?」
「い、いきなり呼び捨てとか……じゃなくて! あんたも嫌がらせに巻き込まれるかもしれないのよ!? わざわざ編入して早々、こんなことに首を突っ込む必要なんてないじゃない!」
「自分は何されても黙ってやり過ごすのに、他人の心配はするんだな」
肩をすくめたリオンは、言葉を続ける。
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