第二章 落ちこぼれ

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 「スフィアが今までどんな目に遭ってきたかなんて、俺にはわからない。だけど、散々嫌がらせを受けても挫けず、魔術師を目指して勉強するキミをバカになんてしないし、笑っていいはずがない。一生徒の俺じゃ、キミを虐めから助けることも、問題を解決することもできないよ。――ただ、孤独から救うことはできる。俺は、才能や権力を盾に、必死になる人間を嘲笑う奴より、惨めでも諦めず前へ進む奴の方がカッコいいと思うし、好きだぜ。だから、俺と今後も仲良くしてくれないか?」  演技でも虚言でもなく、純粋に、心から思ったことを口にした。  「な、なななっ……!」  なぜか顔を赤くしたスフィアが、金魚の如く口をパクパクさせていた。  「どうかした? 俺、なんか気に障るようなこと言ったか?」    怒らせてしまったと勘違いしたリオンが、心配そうに顔を近づけた。  「す、すすす好きにすればっ!? あたしもう行くから! じゃあねっ!」  動揺を隠しきれないスフィアは、慌てて帰り支度をすませると、そそくさと逃げるように去って行ってしまった。  ポツンと、一人残されたリオンは、  「……女子って、難しいんだな」  この潜入が高難易度であることを、改めて実感したのだった。  
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