第三章 いま、自分にできること

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 もちろん、リオンも視線には気づいていた。だが、これまで死線を何度も潜ってきた彼からすれば、たかが魔術師候補生の反応など感じないも同然だった。  まあ、そんなことは億尾にも出さないが。  「はあ……わかったわよ。で、どこがわからないの?」  ついに根負けしたスフィアは、おかしな編入生の相手をすることになったのだ。      そんなことがあったホームルームも終わり、生徒達はドーム型の訓練所へ集合していた。  これから行われる授業は、『魔術実技』。リオンが編入して初めて受ける実技授業だ。  (――ついにこの日がきたか……)  最も正体が露呈する危険がある授業。当然、本気を出すわけではないが、何分彼には、もう一つの悩みの種があった。  (ま、そのための布石だったんだけど――)  リオンは、皆各々が自由な態勢でロイド先生の前に集まる中、少し距離を置いて座るスフィアの隣に腰を降ろす。  ちらっとその様子を見たスフィアは、けれどもう諦めたのか、何も言ってはこなかった。  「よし、じゃあ皆聞いてくれ」  ロイド先生のかけ声で授業が開始され、生徒の意識はそちらに向く。  「実技訓練を始める前に、まずは魔術についての復習をしておこうか。では、魔術には大別して三つの種類がある。これを答えられる者はいるかい?」  その問いに、ほとんどの生徒が挙手をした。     
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