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第四章 作戦開始
では始め――審判を務めるロイド先生の合図で、決闘の火ぶたが切って落とされた。
「おらああああ!」
猛々しい雄叫びを上げ、ガリユスが鎖を引きちぎった猟犬の如く向かってくる。
白魔法による『肉体強化』で、ガリユスのスピードは影を捉えるのも難しいほど速い。
重さと速さで威力の増した拳が、リオンの顔面を襲う。
だが、すぅ――と冷静に息を吸ったリオンは、上半身を傾け、初撃を躱した。
そして――
「こいつは、スフィアの分だッ!」
標的を捕らえることができず、勢い余って前のめりになるガリユスの焦りで歪んだ顔面に、リオンの右拳が叩き込まれた。
「がぁッ!」
バキッ! と鈍い拳打音が鳴り響き、がっしりとした身体が吹き飛ぶ。
リオンの実力を持ってすれば、この程度の相手なら数秒もかからず倒せるが、潜入のという大切な任務がある故本気を出すことはできない。
それでも、最初の一発は譲れなかった――絶対に。
「痛ってーな、クソが!」
空中で、トンボを切って着地したガリユスが、悪態を吐きながらリオンを睨みつける。
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