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「しかしまぁ……今さら学園生活なんてなぁ」
想像すらしていなかった命令に、リオンは思わず苦笑する。
基本的に魔術師を目指す者ならば、魔術学校に通い、教育を受けることは必須である。
しかし、リオンにおいては例外である。幼少期でその才能を見出され、最年少で魔術騎士となった稀代の天才――それが彼だった。
それ故、学校に通った経験など一度もなく、これはリオンにとって前代未聞の任務であった。
「ま、サポートもあることだし……なんとかなるだろ」
リオンは幸先の不安を抱えながら、街行く人達の弾んだ笑い声が溢れる街道を少々重い足取りで進んで行く。
事の発端は、つい数時間前。
――学院に潜入せよ。
それが、リオンに与えられた任務だった。
◇◇◇
「――潜入捜査、ですか?」
巨大なシャンデリアが吊るされた大広間。
部屋の中央で、その存在感を放つ大理石の円卓に両肘をつく壮年の男の言葉を、リオンは復唱した。
――『幻影騎士団』。
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