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序章
不気味な青白い光を放つ満月に、うっすらと雲がかかっている。
吸い込まれるような夜空の下、広大な砂漠地帯に、浮かび上がるようにひっそりと佇む遺跡があった。
石で造られたそれは、かなり昔にできたものなのだろう。永らく強い日差しや強風にさらされ、風化が進んでいた。
柱は折れ、壁や天井は所々崩れ落ち、聖女を象った石造も胴体から頭部が離れ、地面に鎮座していた。
そんな遺跡の内部に、大きな空間があった。
肌を撫でるような、ひんやりとした冷たい空気。天井のひび割れから、僅かに月明かりが差し込んでいる。
自然と気を張りつめてしまうような、神聖な雰囲気すら感じられる広間に一人の少年が立っていた。
名はリオン・アスクライヴ。齢十六、十七ほどで、男性にしては華奢な体格。黒いコートのフードを被り、腰には二振りの剣を携えている。
少年にしてはただならぬ雰囲気を醸し出すリオンは、床に描かれた巨大な魔法陣を鋭い目つきで観察する。
「これは召喚の術式……? それにしちゃ、やけにデカいな」
足で魔法陣が被っていた塵や砂埃を拭きながら、リオンは疑問を口にした。
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