祭りの日の女の子

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祭りの日の女の子

少し声を大にして年配の女性を呼び止めた。白杖を持つ手の反対側に回り込んで肩に手を回すと、Iさんは「いや、すみませんねぇ」と言った。少し訛りがあるが上品な話し方だ。 テーブルを挟んで向かい合うと、さっそくIさんは話始めた。 「あれは……わたしがまだほんの子どもだったときのことですーー」 生まれつき目が見えなかったIさんは、一人で遊ぶことが多かったという。開けた縁側で小鳥の声に耳を澄ますのが好きだった。地主の娘だったため邪険にされることはなかったそうだ。 ある日、祭りの準備で家の者みなが出払っているときに、家を訪ねる人があった。戸を叩き、快活のいい声で呼び掛けるその調子から自分と同年代くらいの女の子だと思いながら戸を開けると、その声の持ち主は言った。 「Nちゃん一緒に遊ばんね!」     
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